交通事故等による後遺症、高次脳機能障害の画像所見

交通事故等で頭を強く打ったり、溺れかけたりと、頭部に衝撃をうけたときには、

高次脳機能障害等の後遺症が考えれるために、頭部MRI検査をお勧めします。

自賠責保険で脳外傷による高次脳機能障害との認定を受けるためには、下記の4点が認められることが必要です。

「自賠責保険における高次脳機能障害の認定システム」を簡単にまとめました。
1、症状の残存
記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状が残ったこと。
2、意識障害
受傷時に一定時間の意識障害があったこと。
3、画像所見
CTやMRIで器質性脳損傷を示す画像所見が認められること。
4、交通事故との因果関係
発症時期が交通事故と近接していること。

MRI検査では、脳の萎縮がわかるソフトウエアVSRAD解析で画像所見を確認できます。

3DT1強調画像で解析可能ですが、その他の撮像方法の場合も対応可能な場合がございますので、お気軽にご相談下さい。

脳外傷による高次脳機能障害は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの多彩な症状として現れ、多かれ少なかれ、

仕事や日常生活に支障を来します。

交通事故等をきっかけに、以下の症状が現れたときには、「脳外傷による高次脳機能障害」の可能性があるので、

専門の医療機関で詳しい検査を受けることをお勧めします。


① 記憶障害

<具体的症状>
事故前の出来事や体験を思い出せない。
事故後、新しいことを覚えることができない。忘れてしまう。
事故後、学力が低下した。勉強ができなくなった。
電話番号や住所のような少量の情報を覚えることができない。
一般的な知識や情報の意味が分からない。思い出せない。

 「記憶」とは、個人的な体験やエピソード、知識、行為、手続など、あらゆる体験を脳が処理できる形に符号化し、貯蔵し、取り出す機能の総体です。

 高次脳機能障害は、様々な記憶障害として現れることがあります。

1)前行性健忘
 いわゆる受傷後の学習障害です。受傷後の新しい情報やエピソードを覚えることが困難になります。

2)逆行性健忘
 受傷前の記憶の喪失、特にエピソードや体験に関する記憶の想起が困難になります。
② 注意障害

<具体的症状>
ボーッとして、周囲の呼びかけに返事をしない。
周囲の音や話し声で気が散って、集中できない。
探し物を見つけられない。
集中や注意が長く続かない。

1)全般性注意障害
 人間の意識は、覚醒状態において、外界から入ってくる多くの情報や、記憶の想起や思考などの様々な内的な事象に晒され続けています。注意は、この中から適切な情報や事象を選択してこれに意識を集中したり、意識の焦点を切り替えて別の情報や事象に柔軟に移動させることです。
 注意は、対象を認知したり、言語や記憶、思考をはじめとする高次脳機能を有効に働かせるために、必要不可欠な神経機能であり、これが障害されると日常生活に大きな支障を来すことになります。

2)半空間無視
 脳損傷の反対側の空間において刺激を見落とすことをはじめとした半側無視行動が見られます。右半球損傷(特に頭頂葉損傷)で左側の無視がしばしば認められます。
③ 遂行機能障害

<具体的症状>
計画や見通しを立てて行動することが苦手になった。
同時に複数の作業を行うことができない。
行動の優先順位を決められない。
約束の時間に間に合わない。
行き当たりばったりの行動が増えた。
一つ一つを指示されないと行動に移すことができない。
突発的な出来事や予想外の出来事に柔軟に対処できない。

 遂行機能とは、言語、行為、対象の認知、記憶など、ある程度独立性を持った高次脳機能を、制御し統合する「より高次の」機能です。

 具体的には、自ら目標を定め、計画性を持ち、必要な方法を適切に用いて、同時進行で起きる様々な出来事を処理し、自己と周囲の関係に配慮し、臨機応変に柔軟に対応し、長期的な展望で、持続性を持って、行動することです。

 遂行機能は、「前頭葉機能」と同じ意味で使われることもあります。

 遂行機能の障害は、知能検査や記憶検査の結果が正常であっても、社会生活や職業にうまく適応できないという形で現れることがしばしばあります。
④ 社会的行動障害

<具体的症状>
意欲、自発性の低下。
依存的になった。
イライラしやすい。すぐに怒る。暴力を振るう。
思い通りにならないと、大声を出す。
自己中心的になった。
対人関係が苦手になった。
こだわりや固執が多くなった。

 「脳外傷による高次脳機能障害」は、様々な社会的行動障害として現れることがあります。

1)意欲、自発性の低下
 意欲がなくなり、自発的な活動が乏しく、一日中家でゴロゴロしているような状態です。意欲、自発性が低下した結果、看護者や家族に依存的になることも見られます。

2)易怒性、感情コントールの困難
 自己中心的で、些細なことでイライラしやすくなり、感情をコントロールすることが困難になります。突然興奮して大声で怒鳴ったり、看護者に対する暴力などの反社会的な行動が見られることがあります。
易怒性のイラスト

3)対人関係の障害
 急な話題転換についていけなかったり、相手の発言をそのまま受け止めてしまうなど対人関係が苦手になります。

4)こだわり、固執
 執着が強く、一つの物事に強くこだわるようになります。
⑤ 疲れやすい(易疲労性)
 脳外傷による高次脳機能障害の症状として非常に多く見られます。私が担当した案件でも、疲れやすくなったという症状を訴える方がたくさんいました。
 神経疲労つまり脳が疲れやすくなるのは、損傷した脳(神経)が受傷前と同じ働きをするのにより多くのエネルギーを必要とすると考えられているからです。

⑥ 二次的な不適応状態・うつ
二次的な不適応状態・うつのイラスト

 脳外傷による高次脳機能障害の症状そのものではありませんが、受傷前には容易にできたことができなくなってしまい、自信を喪失したり、対人関係や仕事で失敗を繰り返して家族や社会との関係がうまくいかなくなった結果、二次的な障害ともいうべき不適応状態やうつ症状を生じることがしばしばあります。

 脳外傷後のうつの発生率は高く、受傷から2~3年後に発生することが多いと言われています。
(3) 高次脳機能障害の特徴

 続けて、高次脳機能障害の特徴と、他の障害にはない特有の問題点を見ていきましょう。
① 見過ごされやすい障害

 受傷間もない急性期では、救急救命や合併した他の傷害の治療も並行して行われることもしばしばです。また、病院での入院生活では、注意や遂行機能といった高次脳機能を使う場面がそれほど多くありません。

 そのため、医師もご家族も、ご本人の高次脳機能障害に気づかないことがあります。

 ところが、家庭生活や学校、職場では、入院時よりも高度な能力が求められますので、ご本人が退院して日常生活に戻った後に、初めて家族が高次脳機能障害に気づくというケースがしばしばあります。

 また、医療機関で行った知能検査や記憶検査の結果は「正常」でも、遂行機能が障害され、社会生活や職業にうまく適応できなくなってしまうことも珍しくありません。つまり、「ぱっと見、障害があるようには見えない」「一見しただけでは障害がわからない」ということです。

 このように、高次脳機能障害は、見過ごされやすく、社会生活や学校生活に戻ってみないと症状が顕在化しにくいという特徴があります。

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